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【STAREE試験】主要評価項目が2つある臨床試験の統計デザインを解説!

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STAREE試験の結果が2026年8月29日、ミュンヘンで開催されたESC Congress 2026(欧州心臓病学会、8月28日~31日)で発表されました。同日、New England Journal of Medicine(NEJM)にも掲載されています。70歳以上の高齢者を対象に、心血管疾患の一次予防におけるスタチン(アトルバスタチン)の効果を検証した大規模ランダム化比較試験です。

この記事では、STAREE試験の臨床的な結論そのものではなく、統計デザインの読み方に焦点を当てます。

具体的には、以下の3つのポイントについて解説します。

  1. ランダム化の方法
  2. サンプルサイズ設計の考え方
  3. 主要評価項目の結果の解釈

STAREE試験では主要評価項目が2つ設定されており、一方は統計学的に有意、もう一方は有意ではないという対照的な結果になりました。

このような臨床試験を題材に、「主要評価項目を複数設定するとはどういうことか」「サンプルサイズはどのように決めるのか」「一方が有意でもう一方が非有意だった場合、どのように結果を解釈するのか」といった、臨床試験の統計デザインを理解するうえで重要なポイントを学んでいきましょう!

STAREE試験とは?

STAREE試験とは?

STAREE試験の概要を、研究疑問の整理によく使われるPICOの枠組みで整理すると以下のとおりです。

PICO内容
P(Patients:対象)70歳以上、心血管疾患・糖尿病・認知症の既往のない地域在住高齢者(オーストラリアのプライマリケア)
I(Intervention:介入)アトルバスタチン40mg/日
C(Comparison:対照)プラセボ
O(Outcomes:評価項目)主要評価項目①MACE(心血管死・非致死性心筋梗塞・脳卒中・冠動脈血行再建のいずれかが生じるまでの時間)、主要評価項目②disability-free survival(全死亡・認知症・持続的身体障害のいずれかが生じるまでの時間)

PICOを使った研究疑問の整理方法については「クリニカルクエスチョンをリサーチクエスチョンに!医学研究で意識すべきPICOとPECOの考え方」もあわせてご覧ください。

この記事では、STAREE試験を「統計デザインの読み方」を学ぶ教材として扱います。臨床的な判断には踏み込みません。実際の治療方針については、個々の患者の状態を踏まえて主治医にご相談ください。

試験デザイン

試験デザイン

STAREE試験は、9,971例(アトルバスタチン群4,984例、プラセボ群4,987例)を対象とした二重盲検ランダム化比較試験です。

STAREE試験の試験デザインの概要

評価項目:primary endpointとsecondary endpoint

臨床試験の評価項目(エンドポイント)は、主要評価項目(primary endpoint)副次評価項目(secondary endpoint)に分けて設定するのが一般的です。

  • 主要評価項目(primary endpoint): 研究が検証したい効果を最も直接的に反映する評価項目
  • 副次評価項目(secondary endpoint): 主要評価項目を補足する情報を得るために測定される評価項目

主要評価項目は1つ設定する試験が多い一方、試験の目的によっては複数の主要評価項目を設定することもあります。

STAREE試験では、主要評価項目として次の2つが設定されました。このように複数の主要評価項目を設定する場合、co-primary endpoint(共主要評価項目)と呼ばれます。

  • MACE: 心血管死・非致死性心筋梗塞・脳卒中・冠動脈血行再建のいずれかが生じるまでの時間
  • disability-free survival: 全死亡・認知症・持続的身体障害のいずれかが生じるまでの時間

一方、副次評価項目には次のようなものが含まれます。

  • 全死亡が生じるまでの時間、心血管死が生じるまでの時間
  • 心筋梗塞(致死性・非致死性)が生じるまでの時間、脳卒中(致死性・非致死性)が生じるまでの時間
  • 認知症・その他の認知機能低下が生じるまでの時間、持続的身体障害が生じるまでの時間
  • 心不全による入院が生じるまでの時間、心房細動が生じるまでの時間、全死因入院が生じるまでの時間、施設入所が必要になるまでの時間
  • がん(致死性・非致死性)が生じるまでの時間、QOL(生活の質)スコアの変化

副次評価項目には、主要評価項目の構成要素を個別に評価したものに加えて、主要評価項目とは異なる観点から治療効果を評価する項目(がん、QOLなど)も含まれています。

これらの結果は、主要評価項目の結果を補足し、治療効果を多面的に評価するための情報となります。ただし、副次評価項目は主要評価項目とは位置づけが異なるため、多重性や検出力などの点も考慮し、p値だけでなく効果量や信頼区間、事前にどのように位置づけられていたかを踏まえて慎重に解釈する必要があります

ランダム化の方法

STAREE試験のランダム化は、以下のように行われています。

  • 割付比: 1:1(アトルバスタチン群 vs プラセボ群)
  • 方法: ブロックサイズ2または4の順列ブロック法(permuted block randomization)
  • 層別化因子: 州(state)と年齢層
  • 割付の実施: 独立した統計家があらかじめ作成した割付表に基づき、Webベースの中央割付システムを通じて実施

単純にコイントスのようなランダム化(simple randomization)を行うと、症例数が少ないうちは偶然どちらかの群に偏ることがあります。STAREE試験ではブロック単位で群のバランスを保つ順列ブロック法を採用しています。

特に年齢層によってイベント発生率が大きく異なることが想定されていたため、年齢層を層別化因子として設定しています。このように、主要評価項目の発生に強く影響すると考えられる因子について、ランダム化時に群間のバランスを確保することは合理的な設計といえます。

ランダム化の考え方全般は「ランダム化はなぜ必要?ランダム化の意義と代表的な方法」、割付比の設計については「ランダム化比較試験の割付比は常に1:1?」もあわせてご覧ください。

サンプルサイズ設計

サンプルサイズ設計

主要評価項目を2つ置いた理由(co-primary endpoint)

臨床試験では、研究の主要な仮説を明確にするため、主要評価項目(primary endpoint)を1つに設定することが一般的です。しかし、1つの研究疑問に集約できない場合には、複数の主要評価項目を設定するco-primary endpoint(共主要評価項目)というデザインが使われることがあります。

STAREE試験では、「スタチンは心血管イベントを減らすか?(→MACE)」「スタチンは元気に長生きできる期間を延ばすか?(→disability-free survival)」という2つの問いが設定されました。高齢者にとって、この2つはどちらも重要でありながら、異なる意味を持つアウトカムです。どちらか一方だけでは研究の目的を十分に表現できないため、2つとも主要評価項目に据えたと考えられます。

評価項目の設計全般については「研究で意識すべき「エンドポイントの型」とは?」もあわせてご覧ください。

主要評価項目を2つ設定すると、サンプルサイズ設計にも2つの影響が生じます。1つは「必要症例数をどのように決めるか」、もう1つは「有意水準(α)をどのように扱うか」です。

検出力とイベント数に基づく設計

STAREE試験では、主要評価項目の必要イベント数、想定される治療効果、イベント発生率、追跡期間などの前提をもとにサンプルサイズを設計しています。設計時に想定された内容は以下のとおりです。

主要評価項目必要イベント数想定される相対リスク減少(RRR)検出力
MACE619件20.2%80%
disability-free survival1,397件14.5%83.1%

ここで重要なのは、必要イベント数と検出力は、主要評価項目ごとに異なるという点です。

MACEでは619件のイベントが必要とされ、20.2%の相対的なリスク減少を検出するための検出力は80.0%と設定されました。一方、disability-free survivalでは1,397件のイベントが必要とされ、14.5%の相対的なリスク減少に対する検出力は83.1%とされました。

そして、まずMACEを基準に必要症例数を決定したうえで、その症例数におけるdisability-free survivalの検出力を計算した結果、disability-free survivalについては1,397件のイベントが必要とされ、検出力は83.1%と見積もられました。したがって、STAREE試験では、MACEに対して必要な症例数を確保すれば、disability-free survivalについても十分な検出力が得られる設計になっていたと理解できます。

なお、当初は18,000例を目標とした試験でしたが、最終的な必要症例数は9,631例とされ、2023年に募集を終了しました。実際の無作為化例数は9,971例でした。このように、臨床試験の計画症例数は、試験期間やイベント発生率などの前提だけでなく、実際の試験運営上の状況によって変化することがあります。

サンプルサイズ設計の手順全般は「サンプルサイズ設計が必要な理由と手順」を参照してください。

co-primary endpointと多重性(階層的検定)

主要評価項目を2つ設定すると、複数の仮説を検定することになるため(検定の多重性の問題)、試験全体の第一種の過誤確率(type I error)をどのように制御するかをあらかじめ決めておく必要があります。

そのため、複数の主要評価項目を設定する場合には、検定の順序や有意水準の配分などを事前に規定します。この問題への対処法は主に3通りあります。

  • 均等分割: α=0.05を2つの評価項目に均等に配分する(各α=0.025)
  • 階層的検定(gatekeeping): 評価項目に優先順位をつけ、上位の検定が有意な場合のみ下位の検定に進む。下位の検定にもα=0.05をそのまま使える
  • 両方が有意であることを成功の定義とする: 両方の仮説が有意であることを試験成功の条件とする場合、各検定を両側5%で行っても、試験全体としての第一種の過誤確率は5%を超えない

STAREE試験の統計解析計画では、上記のうち階層的検定(closed testing procedure)が採用されています。具体的には以下の手順で検定が行われます。

  1. MACEをα=0.05で検定
  2. MACEがp<0.05ならdisability-free survivalをα=0.05で検定
  3. MACEがp≥0.05ならdisability-free survivalのp値は提示しない
co-primary endpointの階層的検定(gatekeeping)の検定順序

この方法では、MACEを最初に検定することで、試験全体の第一種の過誤確率を5%に制御しながら、MACEが有意であった場合には、次のdisability-free survivalについてもα=0.05で検定できます。

ここで注意したいのは、「2つとも有意でなければ試験全体として失敗」という検定ルールではないという点です。

実際の結果では、MACEがp<0.001で統計学的に有意でした。そのため、事前に規定された手順に従ってdisability-free survivalの検定に進みました。その結果、disability-free survivalはp=0.25で統計学的に有意ではありませんでした。

つまり、MACEについては統計学的に有意な結果が得られ、その結果を受けて事前に規定された手順どおりにdisability-free survivalの検定も行われたものの、こちらは有意ではなかったということです。

多重性の考え方全般は「検定の多重性の問題とは?」で解説しています。

結果の解釈

結果の解釈

ハザード比 0.7の解釈

MACEの結果は、「アトルバスタチン群6.0% vs プラセボ群8.3%、ハザード比(HR)0.70(95%信頼区間0.61–0.82)、p<0.001」でした。ニュースなどでは、「心血管イベントを30%減少」と報じられています。

この「30%減少」は、HR 0.70に基づく表現です。厳密には、アトルバスタチン群ではプラセボ群と比べて、追跡期間中のイベント発生ハザードが約30%低かったことを意味します。これは、一定期間内にイベントを経験する累積リスクが30%減少したことと同じではありません。

したがって、STAREEのHR 0.70は、アトルバスタチン群ではプラセボ群と比べて、イベント発生のハザードが約30%低かったと解釈します。

一方、実際にイベントを経験した人の割合を見ると、アトルバスタチン群6.0%、プラセボ群8.3%で、差は2.3ポイントでした。このように、相対的な指標であるHRだけでなく、実際のイベント発生割合や絶対的な差も確認することが重要です。

p=0.25は「効果がない」ことの証明ではない

disability-free survivalの結果は、「12.8% vs 13.6%、HR 0.94(95%信頼区間0.84–1.05)、p=0.25」でした。ここで注意したいのは、p=0.25は「差がない」ことを証明したわけではないという点です。

「統計学的に有意ではない」という結果には、次のような可能性があります。

  • 本当に効果がほとんどない
  • 効果はあるが、今回のデータからは十分な精度で検出できなかった
  • 複合エンドポイントの構成要素によって効果が薄まった(次項参照)

したがって、この結果だけから「効果がない」と結論づけるのは適切ではありません。より正確には、「今回のデータから、効果があると裏付けることはできなかった」と解釈します。

p値と信頼区間の読み方は「p値だけでは不十分!p値に依存した結果報告の落とし穴」「p値とは?医学研究における意味と正しい解釈」で詳しく解説しています。また、有意だった側の結果だけを取り上げて報告することの危うさについては、「研究結果の印象操作(スピン)の問題」もあわせてご覧ください。

STAREE試験デザインから学べること

STAREE試験デザインから学べること

STAREE試験のような臨床試験をデザインするときは、次の点を事前に検討しておくと、結果が出たときの解釈で迷いにくくなります。

  • ランダム化の方法を明記する: 割付比、ブロックの有無、層別化因子、割付の実施方法(中央割付か否か)などを、あらかじめプロトコルに記載する
  • サンプルサイズ設計の前提を明示する: 想定したベースラインのイベント率、効果量、検出力などを明示し、資金や実施期間などの現実的な制約によって変更した場合は、その経緯を記録する
  • 評価項目の見直しは盲検下で行う: イベント発生率などを確認する際には治療割付を伏せ、変更の経緯や、変更前の定義をどのように扱うかを記録する
  • 成功の条件と多重性の調整方法を先に決める: それぞれで有意差が必要なのか、階層的に検定するのかなどを、あらかじめプロトコルに明記する
  • 効果指標と信頼区間を確認する: HRなどの相対的な指標だけでなく、実際のイベント発生割合や絶対的なリスク差も確認する。また、統計学的に有意でない結果についても、信頼区間の幅や含まれる範囲を確認する

まとめ

まとめ

今回はESC Congress 2026で発表されたSTAREE試験を題材に、ランダム化の方法・サンプルサイズ設計・結果の解釈という3つの観点から、臨床試験の統計デザインを解説しました。

  • ランダム化は、州・年齢層で層別化した順列ブロック法、1:1割付、中央割付システムという設計だった
  • サンプルサイズはイベント数を重視した設計で、資金・実施体制の制約により当初の目標から縮小された経緯があった
  • MACEの定義も、盲検下でのイベント発生率の確認に基づいて、試験途中で変更された
  • 主要評価項目が2つ設定されていたため、検定の順序と多重性の扱いが事前に規定されていた
  • 事前に定められた手順に従ってMACE、disability-free survivalの順に検定した結果、MACEは統計学的に有意、disability-free survivalは統計学的に有意ではなかった
  • 結果の解釈では、HRなどの相対的な指標だけでなく、実際のイベント発生割合や絶対的なリスク差も確認することが重要であり、非有意な結果については信頼区間の幅や含まれる範囲にも注目する必要がある

自身の研究をデザインする際は、ランダム化の方法やサンプルサイズ設計の前提を明確にするとともに、結果が得られた後にどのような指標を用いて効果を評価し、どのように解釈するのかまで、あらかじめ考えておくことが重要です。

参考文献

[1] Zoungas S, et al. Atorvastatin, Cardiovascular Events, and Disability-free Survival in Older Adults (STAREE trial). N Engl J Med. 2026. DOI: 10.1056/NEJMoa2607314

[2] European Society of Cardiology. Press release: “Cholesterol-lowering medication reduces major cardiovascular events by 30 per cent in older people without known cardiovascular disease.” 2026-08-29. escardio.org

[3] Zoungas S, et al. A randomised clinical trial of STAtin therapy for Reducing Events in the Elderly (STAREE): Statistical analysis plan. medRxiv. 2025. DOI: 10.1101/2025.02.24.25321974

[4] STAREE investigators. Statins for extension of disability-free survival and primary prevention of cardiovascular events among older people: protocol for a randomised controlled trial in primary care (STAREE trial). PMC10083753

[5] Medscape. “STAREE Strengthens Case for Over-the-Counter Statins.” medscape.com

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