医学研究ではよく患者背景が異なることで見たい治療と効果の関連が歪められる「交絡」という現象が起こります。
交絡を除去するためにサブグループ解析や層別解析が行われますが、これらはよく混同される解析ですが、その本質は異なる解析です。
この記事ではサブグループ解析と層別解析とは何なのか?どのように使い分けていくか?解説します!
要約
- サブグループ解析はサブグループごとに解析を行う解析方法
- 層別解析はサブグループ解析の結果を重みをつけて統合する解析方法
- サブグループ解析はサブグループごと、層別解析は交絡を調整した全体の治療効果に興味があるときに有効!
サブグループ解析は特定の対象に絞って解析する方法
サブグループ解析とは?
サブグループ解析は交絡因子となるような因子ごとに特定の対象に絞って解析を行う方法です。
例えば、男性と女性で治療効果に違いがあると考えられる場合、男性のみで解析、女性のみで解析、と性別ごとに解析を行います。
またサブグループ解析の因子は複数組み合わせることも可能です。
例えば、性別と年齢を組み合わせるのであれば、(男性、65歳未満)、(男性、65歳以上)、(女性、65歳未満)、(女性、65歳以上)の4つの集団に分けて解析することができます。
この方法は非常にシンプルで、かつ結果の見方としても分かりやすいのでよく使われる方法です。
もし、男性よりも女性の方が効果がありそうであれば、「女性には積極的に使用しよう」と判断することになります。
サブグループ解析のデメリット
ただ、サブグループ解析にはデメリットもあります。
それは解析対象を分けることで個々の解析で使われる症例が少なくなってしまうことと
連続値の場合にはカテゴリに分ける必要があること。
症例数が少ない集団では効果の推定がうまくいかなかったり、推定精度が低くなったりします。その結果、解釈できない集団ができてしまい、結果の要約が困難になってしまいます。
このような状況を避けるためには、「集める症例数を増やして各集団の症例数を確保する」、「すべての因子の組み合わせではなく、意味のある因子や組み合わせのみ検討する」、という解決策があります。
また連続値の場合はカテゴリに分ける必要があります。年齢など高齢者は65歳以上、というように一般的な閾値がある場合は問題ありませんが、明確な閾値がない場合は納得のできる閾値を決める必要があります。
そのため、サブグループ解析は解析を部分集団ごとに行うので理解しやすい一方で、サブグループの数やカテゴリに分ける必要があるなど、注意する点もあります。
層別解析はサブグループ解析の結果を重みをつけて統合させる解析
層別解析とは?
層別解析はサブグループ解析の結果を重みをつけて統合させる解析です。サブグループ解析とは違って、結果を統合させるので個々のサブグループ解析の症例数が少なくても解釈可能になります。
層別解析のデメリット
層別解析にもデメリットがあります。
それは解析の結果がサブグループによって異なる場合、層別解析の結果が解釈できない結果になってしまうことです。
例えば治療Aと治療Bの治療効果を性別ごとに比較したとき、以下のように男女で効果がある治療が異なるとします。
このとき、本当に結果を統合してもよいでしょうか?
- 男性:治療A > 治療B
- 女性:治療A < 治療B
そのため層別解析を行う前には先にサブグループ解析を行って、サブグループ間で効果に大きな差がないかを確認しておく必要があります。
サブグループ解析と層別解析の使い分け
サブグループ解析はサブグループごとの複数の治療効果と層別解析はサブグループを併合した一つの治療効果と異なる効果を見ています。そのため、何に興味があるか、に注目して二つの解析を使い分けする必要があります。
例えば、サブグループ解析はサブグループ間で治療に差がないか、つまり交互作用がないかを検討するときに使用されます。性別ごと、年齢ごと、遺伝子ごと、と複数の因子においてサブグループ解析を実施することで、治療効果が高そうな集団を特定して、治療方針の選択に役立てられます。
対して、層別解析は群間で偏って交絡因子のバランスを調整した治療効果を見たいときに使われます。つまり、部分集団ごとの治療効果の違いには興味がなく、対象となっている全ての症例に対して真の治療効果の違いがあるか、ということに興味があるときに使用されます。ただ層別解析を行った場合でも、サブグループ解析による交互作用の検討は重要なのでサブグループ解析も行っておきましょう!
まとめ
今回はサブグループ解析と層別解析とは何か?とその使い分けについて説明しました。何に興味があるか?を明確にして、正しく使い分けていきましょう!
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