【臨床研究の結果はどの対象に適応される?】一般化可能性(外的妥当性)の考え方と一般化可能性を担保する方法を解説!

臨床研究によって得られた知見は実臨床に活用されていきます。例えば、大規模な第III相の臨床試験の結果、実臨床での標準治療が変わるということがあります。

では臨床研究の結果がすべて実臨床に適応されるのでしょうか?
この問いの答えを考える上で必要な概念として一般化可能性(外的妥当性)という概念があります。一般化可能性は臨床研究の結果が一般化(外挿)できる可能性のことです。臨床研究は実臨床に適切に適応されていくためにも、この一般化可能性を意識して行う必要があります。

この記事では一般化可能性とはなにか?一般化可能性を担保するにはどうするべきなのか?について解説します!

一般化可能性(外的妥当性)=臨床研究の結果が実臨床で適応できる範囲

一般化可能性の定義

一般化可能性(generalizability)とは、臨床研究の結果が実臨床に適応できる範囲のことを指します。ICH-E9では「臨床試験で得た知見を、その試験に参加した被験者からより広い患者集団とより広い医療現場へ外挿 することが信頼をもってできる程度」と説明されています。

また一般化可能性は臨床研究の外への妥当性という意味で「外的妥当性」と呼ばれることもあります。

一般化可能性の例として以下のような場合を考えてみましょう!

一般化可能性の例男性のみの結果は女性には適応できない

男性を対象に治療Aと治療Bの効果の差を調べた臨床研究を行って、「治療Aの方が治療Bより治療効果があった」という結果が得られたとします。このとき、実臨床では「男性には治療Aの方を行おう!」というように治療方針が変わっていくと思います。

では、「女性」にはどちらの治療を行うことになるでしょうか?

この研究では女性が研究対象に含まれていないので、「女性に対してどちらの治療を行うべきか」という結論を出すことができません

つまり、一般化可能性の観点では、この臨床研究の結果は「男性には適応できるものの、女性には適応できない」という判断になります

このように一般化可能性を担保するためには、「最終的に研究結果をどのような対象に適応したいのか」を研究前にしっかりと議論しておく必要があります

一般化可能性を担保する3種類の方法

一般化可能性を担保する方法

では一般化可能性を担保するためにはどうすればよいでしょうか?
ここでは一般化可能性を担保するための方法を3種類みていきましょう!

一般可能性を担保する方法

  • 患者を母集団からランダムサンプリングしてくる
  • 適切に患者選択基準を定める
  • サブグループ解析で患者背景ごとの効果の差を調べる

患者を母集団からランダムサンプリングしてくる

一つ目の方法は患者を母集団からランダムにサンプリングしてくるという方法です。つまり、研究結果を適応したい患者集団から満遍なく患者を登録してくる、ということです。

少し分かりにくいので、ランダムサンプリングされていない状況について考えてみましょう。

ランダムサンプリングの例

例えば臨床研究の中には特定の病院から登録された患者のみを対象としている研究があります。
例えば、大学病院のような大規模な病院や専門病院でのみ患者登録が行われる研究。そのような研究ははランダムサンプリングされているとは言えません。というのも、このような症例には個人や地域病院から紹介された疾患の重症度や希少性が一般の患者と異なる症例が多く含まれます。

そのため、特定の病院から患者登録がされている場合には、軽症の症例が含まれないなど母集団から乖離した集団をサンプリングする可能性が高いと考えられます。

ただし、母集団を特定することは困難であり、後述する患者選択基準によってバイアスのかかった研究対象になっていることには注意が必要です。

適切に患者選択基準を定める

患者選択基準は臨床研究においてどのような患者を登録するかを定めた基準です。つまり、患者選択基準で選択された対象は臨床試験の結果が一番あてはまる対象ということになります。

そのため、患者選択基準を適切に設定することで一般化可能性を担保することができます

では適切な患者選択基準を設定しないとどうなるのでしょうか?
患者選択基準が緩すぎたり厳しすぎたりと、臨床研究の結果がどうなるのか見ていきましょう!

患者選択基準メリットデメリット
厳しすぎる治療効果の評価が安定する一般化可能性・実施可能性が損なわれる
緩すぎる一般化可能性・実施可能性が高まる治療効果の評価にバイアスが入る

患者選択基準が厳しすぎる場合

このような場合には母集団の中でも選りすぐられたエリート対象が研究対象になることになります。

このような対象選択では解析対象の患者背景のバラつきが小さくなるため、療効果の評価が安定させることができ有意差がでやすくなります
一方で、対象が絞られることで母集団と乖離した集団となり、一般化可能性が損なわれることになります。また希少疾患のようにもともとの症例数が少ない場合、対象となる症例数がさらに少なくなってしまうため、登録が難しくなり実施可能性が損なわれることになります

患者選択基準が緩すぎる場合

このような場合には母集団の中でも幅広く対象を研究対象とすることになるため、一般化可能性を高めることになります。また対象を幅広く取れるということは患者登録が容易になるということでもあります。そのため、試験の実施可能性を高めることができます

ただし、様々な背景を持つ対象を研究対象とするため、対象のバラつきが大きくなり、治療効果の評価にバイアスが入りやすくなります

このように患者選択基準が厳しくても緩くても実施可能性と治療効果の観点からメリット・デメリットがあります。

そのため、試験が終了したときに適応したい対象はどのような対象であるか、一般化可能性を意識して患者選択基準を定めていく必要があります。

サブグループ解析で患者背景ごとの効果の差を調べる

上の二つの方法は研究前に検討しておくということでしたが、この方法は研究後に検討する方法です。

サブグループ解析は対象を男性のみにして解析と対象を女性のみにしてに解析、というように患者背景ごとに治療効果を調べる解析方法です。

サブグループ解析によってどのような患者背景の患者においても同様の結果が得られると一般化可能性が示されることになります。一方で特定の対象で異なる治療効果を示した場合にはどうしてそのような結果が得られたのか、臨床的に効果予測因子と考えてよいのか、など考察が必要になります。

研究に含まれない対象には研究結果を適応できないのか?

研究に含まれない対象には研究結果を適応できないのか?

一般化可能性が臨床研究の結果を実臨床に適応する上で必要な概念であることを説明してきました。

では、臨床研究の対象に含まれていない研究結果は実臨床の対象には適応できないのでしょうか?例えば、65歳以下を対象にした研究の結果は66歳に適応することはできないのでしょうか?

臨床研究の一般化可能性を解釈する上で必要なのは「一般化可能性は連続的な概念である」ということです!

つまり、「18~65歳を対象にした研究の結果は66歳に適応できない!」というありなしの判定ではなく、「60歳以上の高齢者でも効果があるから66歳でも効果があるだろう」というように、ある程度ばらつきを持って実臨床への適応を考えるべきということです。

一般化可能性は連続的な概念

そのため、「どの程度臨床研究の対象と実臨床の対象が似通っているか」を評価することで適応の範囲を考える必要があります

まとめ

各記事のまとめ

今回は臨床研究の一般化可能性と一般化可能性を担保する方法について解説しました!

一般化可能性はどのような対象に臨床研究の結果を適応できるかを考える上で必要な概念です。一般化可能性を担保するには研究開始前に適切に患者選択基準を定めておくことが一番重要です。

そのため、研究を始める前には、「研究結果が得られたときにどのような対象の実臨床が変えたいのか」を意識して、患者選択基準を検討しましょう!

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