論文を投稿すると、レビュアーから「サンプルサイズ(症例数)の根拠を示してください」と指摘されることがあります。
前向きな臨床試験では、研究開始前にサンプルサイズ設計を行っていることが一般的ですが、後ろ向き研究では、すでに収集されたデータを用いて解析するため、事前にサンプルサイズ計算を行っていないことも少なくありません。
そのため、「サンプルサイズの根拠を示してください」と指摘されたときに、どのように回答すればよいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
実は、研究デザインによってサンプルサイズの考え方や、査読コメントへの対応方法は異なります。
この記事では、研究デザイン別の対応方法と返信例文を紹介します!
サンプルサイズ設計そのものの考え方は「サンプルサイズ設計が必要な理由とサンプルサイズ設計の手順を解説!」で詳しく解説しています。
ケース別の対応方法

ケース1: 前向き試験で、事前にサンプルサイズ計算を行っていた場合
前向き試験で事前にサンプルサイズ計算を行っていた場合は、サンプルサイズ計算に使用したパラメータと、その設定根拠を明記して回答します。
具体的には、以下のような情報を示します。
- 想定した効果量(平均値差、割合の差、ハザード比など)
- バラつき
- 有意水準
- 検出力(power)
- 片側検定・両側検定の別
- 各パラメータの根拠となった先行研究や過去のデータ
これらをMethodsに追記し、どのような根拠に基づいてサンプルサイズを設定したのかが読者にわかるようにすることが重要です!
そのままコピペOK!返信例文(英語)
The sample size for this study was calculated based on an assumed mean difference of X and a standard deviation of Y, based on a previous study (Reference X), with a two-sided significance level of 5% and a power of 80%. We have added these details to the Methods section.
和訳
本研究のサンプルサイズは、先行研究(参考文献X)をもとに、平均値差〇〇、標準偏差〇〇を想定し、有意水準5%、検出力80%として算出しております。これらの詳細をMethodsセクションに追記いたしました。
ケース2: 後ろ向き研究で、事前にサンプルサイズ計算を行っていなかった場合
後ろ向き研究では、既存のデータベースなどから利用可能な適格症例をすべて解析対象とすることがあり、事前にサンプルサイズ計算を行っていない場合があります。
そのため、レビュアーから指摘された場合は、なぜその症例数になったのか(研究期間や選択基準など)を説明することが重要です。
また、有意差が得られなかった場合に、事後的な検出力計算(post-hoc power calculation)を行いたくなることがありますが、観察された結果を用いた事後的な検出力計算は、通常推奨されません。効果量と95%信頼区間を示し、結果の不確実性を評価する方が適切です。
そのままコピペOK!返信例文(英語)
This is a retrospective study using an existing database, and all eligible cases during the study period were included in the analysis. Therefore, a prospective sample size calculation was not performed. We have clarified how the study population was determined in the Methods section.
和訳
本研究は既存のデータベースを用いた後ろ向き研究であり、研究期間中に適格基準を満たした症例をすべて解析対象としたため、事前のサンプルサイズ計算は実施しておりません。研究対象集団の決定方法について、Methodsセクションに明記いたしました。
ケース3: パイロット研究・症例数が限られる研究の場合
パイロット研究など、症例数が限られる研究では、得られた効果量の推定値を今後の検証的研究に活用するという研究の位置づけを明記します。
このような研究では、効果量やその95%信頼区間を示し、今後の研究で検証すべき仮説を提示することが重要です。
そのままコピペOK!返信例文(英語)
This study was designed as a pilot study, and the effect size estimates obtained will be used to inform the sample size calculation for a future confirmatory study. We have added this clarification to the Methods and Discussion sections.
和訳
本研究はパイロット研究として位置づけており、得られた効果量の推定値は、今後計画する検証的研究のサンプルサイズ設計に活用する予定です。その旨をMethodsおよびDiscussionに追記いたしました。
まとめ

今回は、サンプルサイズの根拠を求められたときの対応方法について解説しました。
- 前向き研究:計算に用いたパラメータと、その根拠となった文献などを明記して回答する
- 後ろ向き研究:研究期間や選択基準などに基づいて利用可能な症例数が決まることを説明し、事後的な検出力計算は通常行わない
- パイロット研究:検証的研究とは異なる研究の位置づけを明確にする
サンプルサイズについて指摘された場合は、単に「計算していません」と回答するのではなく、「なぜその症例数になったのか」を研究デザインに沿って論理的に説明することが重要です。
レビュアーの指摘をきっかけに、サンプルサイズの設定根拠や研究の位置づけを明確にすることで、より説得力のある論文に仕上げていきましょう!



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