論文を投稿すると、レビュアーから「複数の検定を行っているが、多重性の調整はしているか?」という指摘を受けることがあります。実は多重性の調整は常に必要というわけではなく、研究デザインによって適切な対応が異なります。
この記事では、よくあるケースごとに指摘を受けたときの判断フローと、そのまま使える返信例文を紹介します!
多重性そのものの考え方は「検定の多重性の問題とは?」で解説しているので、まだの方はまずこちらをご覧ください。
まず確認すべきこと:研究の目的は検証的研究か探索的研究か

レビュアーから「多重性を調整してください」と指摘されたら、まず確認したいのが研究の目的と、今回行った検定の位置づけです。
大きく分けると、以下のように考えることができます。
- 検証的研究(事前に仮説や解析計画が定められている臨床試験など)の場合
→ 複数の仮説を検定することで第Ⅰ種過誤が増加する可能性があるため、研究計画に応じて多重性を考慮した有意水準の調整などを行うことが重要 - 探索的研究(多くの後ろ向き研究など)の場合
→ 必ずしも多重性を調整することが目的ではなく、効果量とその95%信頼区間を示し、結果の不確実性を含めて解釈することが重要
対応フロー:よくあるケースと対応方法

ケース1: 検証的な研究で、複数の主要評価項目や複数回の検定を行っている場合
検証的な研究では、複数の仮説検定を行うことで、研究全体として偶然に「有意」と判定される可能性が高くなるため、事前に定めた解析計画に基づいて多重性を考慮することが重要です。
複数の主要評価項目や複数の仮説を検定している場合は、研究の目的や検定の構造に応じて、Bonferroni法やHolm法などの多重性調整法を検討します。
査読で指摘された場合は、実施した調整方法を明記し、調整後の結果を提示しましょう!
そのままコピペOK!返信例文(英語)
As pointed out by the reviewer, we performed N statistical tests for [outcome(s)] in this study. To account for multiplicity, we adjusted the significance level using the Holm method. The revised results are presented in Table X.
和訳
ご指摘の通り、本研究では〇〇の評価項目についてN回の検定を行っております。多重性を考慮し、Holm法により有意水準を調整いたしました。修正後の結果をTable Xに示します。
ケース2: 探索的な後ろ向き研究で、多数のサブグループ解析を行っている場合
探索的な後ろ向き研究では、多数のサブグループ解析を行うことがあります。
このような場合、必ずしも一律に多重性の調整を行うのではなく、本研究が探索的な研究であり、得られた結果は探索的なものであることを明記するという対応も選択肢になります。
そのうえで、p値だけで結果を判断するのではなく、効果量とその95%信頼区間をあわせて報告し、結果の大きさと不確実性を示すことが重要です。
そのままコピペOK!返信例文(英語)
We thank the reviewer for this comment. As this study is exploratory in nature, we did not apply a formal adjustment for multiplicity. Instead, we interpreted the results as hypothesis-generating and focused on the effect estimates (odds ratios) and their 95% confidence intervals rather than relying solely on p-values. We have clarified this point in the Discussion (Line XX).
和訳
ご指摘ありがとうございます。本研究は探索的な性質を持つ研究であるため、多重性に対する形式的な調整は行っておりません。その代わり、得られた結果は仮説生成的なものとして解釈し、p値だけに依存するのではなく、効果量(オッズ比)とその95%信頼区間を重視して結果を解釈しました。この点をDiscussionに明記いたしました(Line XX)。
ケース3: ベースライン(患者背景)の群間比較で検定を行っている場合
ランダム化比較試験では、ベースラインの患者背景について群間比較の検定を行うことは推奨されていません。
ランダム化によって群間の比較可能性が確保されていることを確認するために、ベースライン特性についてp値を用いて「両群に差があるか」を検定することには、あまり意味がないためです。
そのため、査読で多重性について指摘された場合には、ベースライン比較の検定自体を削除し、記述統計のみを報告するという対応が適切な場合があります。
そのままコピペOK!返信例文(英語)
We thank the reviewer for this comment. In accordance with the CONSORT guideline, we have removed the statistical tests (p-values) for baseline comparisons between groups and now report descriptive statistics only.
和訳
ご指摘ありがとうございます。CONSORTガイドラインの推奨に従い、ベースラインの患者背景における群間比較の検定(p値)を削除し、記述統計のみの報告に変更いたしました。
まとめ

今回は、検定の多重性を指摘されたときの対応方法について解説しました。
- 査読コメントへの対応は、研究が検証的か探索的か、また検定が研究の中でどのように位置づけられているかによって方針が変わる
- 検証的研究では研究デザインや検定の構造に応じて、Bonferroni法・Holm法などの多重性調整法を検討し、使用した方法を明記する
- 探索的研究では必ずしも多重性を調整するのではなく、効果量とその95%信頼区間をあわせて報告し、結果を探索的に解釈するという対応も選択肢になる
- ランダム化比較試験のベースライン比較では、検定自体を削除し記述統計のみを報告することも選択肢になる
査読コメントへの対応で重要なのは、「指摘されたから、とりあえず多重性を調整する」ということではありません。
なぜその検定を行ったのか、その検定が研究の中でどのような位置づけなのかを確認し、研究デザインや解析目的に合った対応を検討することが重要です。
レビュアーからの指摘をきっかけに解析方法や結果の示し方を見直すことで、より適切で、説得力のある研究報告につなげていきましょう!



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